泡の噴流のキャビティーションと超音波 その大いなる誤解について
高圧水といっても 8MPa程度ですが,
その高圧水にエアーも混ぜて 噴射し、その時発生するキャビティーション効果でよごれを除去すると言う記事を見て、誤解を解く必要を痛感。ここに投稿します。
要約すると、比較的圧力の高い水にエアーを混ぜて噴射、その時キャビティーションが発生して、超音波も発生し、洗浄効果を上げると言う様な事が書いてあります。微細な急速移動するバブルについて 洗浄効果が どの程度あるかを 問題にしているのでは、ありません。キャビティーションと言う言葉についてです。キャビティーは、一般に空洞を意味し、鋳造品の中の空洞もキャビティーと言うので、水の中の空気の泡もキャビティーと 称しても 良いのかもしれません。しかし、キャビティーションは 空洞崩壊現象と訳されます。大気圧下の水流で 噴射された空気の泡、気泡は、その時点で、大気圧と 水圧による圧力とつりあっていて、その形を維持しています。泡が 崩壊、あるいは、消滅するためには、泡を変形、消滅させるための圧力波が、どこからか 供給されなくてはなりません。 超音波の場合は、超音波自身が その圧力エネルギーであり、大気圧、水圧も加算され、さらに、キャビティーの多くが 内部が、真空、または、減圧下にあるため、速やかに 消滅します。いわゆるキャビティーションです。超音波以外のいわゆるキャビティーションは 周囲の水圧が 大変な高圧化になる場合の現象です。
高圧水に混ぜた空気の微泡は、高圧に対応して泡の形状を維持しているので、且つ水中ですから、その気泡の内部圧力は 水面上の空気の密度より大きくなります。この空気の泡をつぶしたり、縮小させたり、分割させるのは、容易では ありません。注射器に空気を入れて、出口をふさいで、体積を小さくしてみてください。工業用のエアーシリンダーの工場のエアー圧は、平均0.4MPaです。8MPaが、事実であれば、その20倍の圧力の高圧水に吹き込むための空気の泡の内部圧力は、泡の形状を維持するために いくらでなければならないでしょうか。噴流として放出された場合には、泡にかかる圧力は、大部分、噴出し位置の水深に対応する水圧と大気圧です。水流の推進圧力もありますが。ここで 起きるのは 崩壊でなく 合泡です。つまりキャビティーション(空洞崩壊)現象は ありえないのです。合泡は、泡の崩壊ではなく、拡大ですから。
この時、つまり噴流時に 超音波が出ると、かいてありました。私は昔から その時は 聞くことにしています。どのくらいの周波数で、どのようにして確認測定されましたか?超音波洗顔器が バカ売れした時代にも、超音波洗濯機と称したバブル洗濯機が登場した時もメーカーに聞きました。全て、測定データは無く、単なる消費者向けのキャッチコピーでした。同じレベルなら 金魚鉢の中の金魚は、いつも超音波洗浄されていることになりますね、と言ったものです。超音波は 耳に聞こえない20KHz以上の音波です。超高性能の計測器があれば、きっと発生いることは、証明できるでしょう。しかし、何の役割もしていません。そして、超音波自身は、空気の泡が大敵で、空気の泡に消滅します。
超音波によって発生するキャビティーションの応用技術の開発を 天職とする一人として あえて この小文を記載させていただきました。多少とも 誤解の払拭に役立てば 幸いです。by shibano