超音波で発生するキャビティーの温度は、8000℃!?
超音波を 液中に照射すると、その液体の温度が上昇する。球状星雲型キャビティーを効率よく発生させた場合は、その発生熱量は、超音波の出力とほぼ同等である。従って、超音波バリ取りのように 液温が 10℃以下で管理することが必要な場合は、その温度における、超音波の出力と同等の冷却能力を持つチラー(冷水機)で、液体を冷却する必要が出てくる。
さて、その熱の発生要因であるキャビティーの温度は、8000℃になるとかいう情報が WEB上に存在して、夢を与えてくれる。太陽の表面温度6000℃を越すという。しかし、それは、キャビティを1個の真空の泡と考えて、消滅する時の衝撃波を 中心の1点(任意にこの体積を選択されるのは困る)に集中させて 衝撃エネルギーを温度に変換した場合である。あまりに仮定が雑すぎる。以前、アメリカで 発表された、超音波常温核融合の夢は ここから生まれた。もちろん、追試験では 確認データが取れず、文字通り夢と消えた。筆者は、あまりに 超音波の知識のない実験方法に憤りを感じたことを覚えている。
超音波で発生するキャビティーの消滅時の挙動は、そのような単純なものではない。1個のキャビティーは、多数の真空核からなる。従って、私は キャビティーを微小真空核(マイクロキャビティ)群と呼ぶ。理想的な球状に育ったキャビティーにおいては、マイクロキャビティーは、キャビティーの中心からの位置を変えずに 同期して 音圧変化に対応して、生成消滅を繰り返す。消滅時には、マイクロキャビティーの内部で、熱エネルギーが 発生し、また、マクロキャビティーの極大時にマイクロキャビティー間に閉じ込められた水が圧縮されて熱エネルギーを持つ。この言い方も、キャビティーの生成と消滅の過程を わかりやすく単純化して話しているのに違いない。
いずれにしても 太陽表面温度以上に水が熱エネルギーを持つ瞬間はない。素粒子の衝突を議論しているのではない。水である。
今年度中に キャビティーの生成消滅の過程を より鮮やかに撮影して だれもが わかりやすい正確なキャビティーの生成、消滅のモデルを提供したい。
1mm未満の超微小精密加工品の バリ取り
当社には、1~3mm未満で 水の表面張力で、容易に浮いて流れていってしまうような超微小の精密加工品のバリ取り依頼が 少なくない。ステンレス系の小さくて、肉眼で容易に形を判別できない微小精密加工品は、マイクロスコープで 100倍以上に拡大してみると 驚くほど複雑な加工をしてある事がわかり、いつも 驚嘆させられている。しかし、落ち着いて、良く見ると、そこには 繊細な精密微小加工の故か、様々な形をしたバリが、複雑に多数、付いていることが わかる。最近、この加工用途で多いのは、医療用で、脳、心臓、動脈の手術に関するものが多い。超音波バリ取りは、水(純水)以外使わないので、安心していただけると思う。
この超微小精密加工品のバリ取りには 超音波バリ取りが 最適である。様々な対象物ごとに超音波バリ取りのノウハウがある。このような課題を抱えているお客様は 御一報いただきたい。
チタンのバリ取り と 超音波砥粒研磨技術
チタンの精密加工品のバリは、極めて硬く、超音波のキャビティの衝撃力だけで除去するには、限界がある。 そこで、当社は、水の中に、特殊な砥粒を混在させて そこに、強力な超音波を照射して、キャビティーの衝撃力と 砥粒の研磨能力を併用する超音波砥粒バリ取り研磨技術を開発してきた。まだ、納入事例は 少ないが、チタンに限らず、バリが、非常に硬く、超音波だけで、除去できない場合、また、バリが、精密細管のカット面の全周の出ていて、リング状になっているような場合など、超音波砥粒バリ取り研磨は、有効であると 考えている。
チタン等の 従来方法で 容易に除去できないバリ取りに 超音波砥粒バリ取り研磨技術が、使用出来る可能性について お知らせいたします。
超音波バリ取り 利用限界周波数への 挑戦
超音波バリ取り技術は 御承知のように 超音波で発生するキャビティー(微小真空核群)の生成、消滅時の衝撃力を利用する技術です。その正と負の衝撃力は、キャビティーの発生と消滅時に 移動するその液体のエネルギーで 代替することが出来ます。
従って、超音波洗浄技術者、その極限的応用である超音波バリ取り技術者は、より大きなキャビティーを より高速で発生消滅させ、その発生密度をより高くすることを考えることになります。超音波洗浄と超音波バリ取りのキャビティーへの関わり方の違いは、後者が 純粋に キャビティーの衝撃力の強化を目指すところにあります。
超音波振動板の発振諸条件を 同じと仮定して 1個のキャビティーにのみ、注目して考えると、キャビティーの径は周波数に反比例し、生成、消滅速度は、周波数に比例します。 25KHzと20KHzで 比較検討すると キャビティーの衝撃力は、20KHzは、25KHzの1.25倍になります。しかし、20KHzの超音波は、人間の可聴域限界にあり、危険でもあります。
当社は お客様の要望に対応して 超音波バリ取りの利用下限限界周波数の20KHzに挑戦し 実験を続けています。もちろん、事故を起こさないように細心の注意を払いつつです。( この実験で 以前、充分 技術を持っていなかった筆者shibanoは 何度も気絶した経験があります) 衝撃力が 現在の1.25倍のキャビティー発生を実現するための実験です。
結果が出ましたら 皆様に 御報告いたします。
ゴムの精密成型品 バリ厚0.05mm以下 サンプル募集
お客様へ
ゴムのバリ取りについて、可能性が見えてきました。バリ厚をコントロールすることは、大変難しいことだと 思いますが、それに劣らず、バリ除去も大変工数、経費のかかる工程で、品質管理の大きな障害です。ゴムのバリ厚を0.05mm以下にすることが、どの程度難しいことなのか、わかりませんが、今日までの実験で、バリ厚0.05mm以下であれば、1~2分で、バリが、取れる可能性が 出てきました。この意味は、シートから、成型品が、分離、回収できると言う意味です。
お客様に お願いがあります。まだ、今は、初期実験段階ですが、バリ厚0.05mm以下のゴムの成型品を送っていただけないでしょうか。無償で 実験して、データを送らせて頂きます。
プラスチックスエージ 7月号 [超音波微小バリ取り洗浄装置の特徴]掲載
プラスチック加工の専門誌 プラスチックスエージ7月号に [超音波微小バリ取り洗浄装置の特徴]のタイトルで、寄稿し、掲載されました。PPS成型品を中心に多くのプラスチック成型品の成型バリ、加工バリの除去に超音波が、利用されるようになりました。この1年の現状をまとめたものです。発行元は、㈱プラスチックス・エージ 編集部 TEL 03-3256-1951です。プラスチックの種類は 多く、その種類と進化に比べると 超音波バリ取り装置の実績は、まだまだ少ないのが現状ですが、これからも 理解と普及に努めていきます。人件費の削減と 品質の安定が、超音波バリ取り装置の目的です。