APR版超音波洗浄装置の革新
APR版 液晶用のポリブタジエンの版の存在を知ったのは、当時の版製造メーカーで、世界のシェア80%を誇っていたコムラテックのK専務からである。K専務は、大変熱心にAPR版の洗浄機の必要性を説いて下さった。当時、何処も不織布で 人間が アセトンを付けて拭いて洗浄していた時代。その不織布の使用量は膨大で、その無駄を省こうと言う事もあった。いずれにしても K専務の指導が無ければ、APR版の洗浄システムの完成は、なかった。
最適な洗浄剤を捜し、洗浄実験を続けた。必要性を説かれてから4年。NMPとの出会い、APR版洗浄技術の基礎が 出来た。世界初の1号機は、日立茂原さん。お世辞にも 良い洗浄機とは、言えなかった。申し訳ない。しかしここで、APR版と言うものに 深くかかわる事が出来て、次からの成功につながった。
2号機は、シャープ多気工場。それから、AU(1号機から4号機)、エプソン、ソニー、カシオ、STLCD,日本電気・・・・。と APR版洗浄機を納入し続けた。1槽式~4槽式と発展していく。版も どんどん大型化。8世代は、当たり前になった。NMP~純水へ 至る洗浄技術は 基本特許で 抑えたあったが、仔細あり 特許を手放す事態があり、日本の後発メーカーが、販売出来るようになった。いずれにしても 世界初めてから10号機前後まで 全てAPR版洗浄機は、K専務とタッグを組んで その指導のもとで 製造販売したものである。
APR版の大型化に伴い超音波技術も 大きく進化した。4800W~9600W そして 現在の14400Wに至る技術も この版の大型化に追いつくための技術開発の結果である。超音波の周波数も 50KHzを基本周波とする275KHzまでの 広域同時多重波を開発、版の大型化(初期継ぎ目対応)に 対応した。槽の幅も NMPの量を減らす目的もあり、75mmから105mmと言う薄さで、APR版は、キャビティーの定在波に合わせて、下降浸漬して、超音波洗浄する。もちろん NMPは、溶剤であるから真空脱気(超音波キャビティーション強化システム]システムは 必須である。これが無ければ 超音波は 意味が無い。
2年前、インドのムンバイ近郊に 次世代液晶工場を作ると言う事で、中国製造、インド納入を計画したが、大雨で工場用地が、流され 工事が遅れ、現地に視察に行こうと計画していた矢先、テロ事件が起きた。時期がずれるとテロに巻き込まれたかもしれない。APR版洗浄機には、開発当初のような 熱い思いは 無くなったが、超音波発振器、振動子製造技術の革新を促した。中国にあふれる液晶工場、そして そこで働く多くの日本人。APR版洗浄機は、今、どんな技術の革新を 要求しているのだろうか。 楽しみである。文責:柴野