マット 絨毯の超音波洗浄
1990年代に 京都福知山に 私(筆者)は、D社と共同で、D社のマットを超音波洗浄する技術を開発するための 研究所を作った。前工程の 砂落とし工程は T社府中が 請け負っていた。前工程の洗浄不良、超音波洗浄技術の未熟で なかなか 安定した結果が出ず、D社のこの開発の責任者のS専務には、だいぶ迷惑かけたと 思う。並行して アメリカ ワシントンで、アルカリイオン水を使ったクリーニング装置の発表を行い、超音波クリーニング装置のD社とアメリカ販売の計画を立てていた。
突然のS専務派(と 言っていいのか分からないのだけれど)の失脚と左遷により、関係した開発計画は、消滅。その後 全て 独自に マット洗浄技術、イランの商社経由の絨毯の超音波洗浄技術の開発を継続させた。2000年に入り、技術の完成を確信して D社に呼びかけ 技術開発本部長他 責任者 数名立ち会いで マットを3枚折りたたんで 針金で縛り、当社のノウハウにもとずく、マット超音波洗浄を 行った。
基本技術は、当社のMARS-EH シリーズである。 結果は、大成功。超音波マット洗浄は、良好であることを 確認していただいた。しかし、はD社、設備投資をしたばかりと言う事で、超音波マット洗浄技術は、結局 導入には、至らなかった。マット超音波技術は、マットだけでなく、絨毯や、タクシー、病院、ホテルのシーツ、工場や、事務所の空調用のフィルター、繊維状物質の超音波洗浄技術の完成を示している。それは、また、S専務が夢見た、超音波クリーニング基本技術の完成でもあった。
現在 中国、ブラジルからの ライセンス供与の呼びかけがあり、検討している。文責:柴野
ワイシャツの超音波洗浄 2分で200枚!
家庭用衣料品の洗浄を請け負う・クリーニング業界で、最も利益を出しにくいのが、ワイシャツである。安売り、値引きに対象になっている事もあり、手間の割に 費用が取れない。従って、超音波が クリーニング業界で使用していただける技術に昇華するためには、ワイシャツのクリ―ニング技術で、利益を生み出す洗浄技術でなくては ならない。当社の技術は、ワイシャツを ハンガーにかけたまま、あるいは 任意に畳んだままでも、丸めたままでも 200枚程度を 超音波照射 2分で きれいに洗う事が出来る。私(筆者 柴野)、以前 P&Gさん立ち会いで、標準汚染布を使って 確認した技術である。もちろん 今、超音波技術は 当時より遥かに進んでいるが、基本は 変わらない。超音波クリーニング技術の普及は、どの分野から 始まるか 今 秒読みだと考えている。お待ちいただきたい。
火力発電所のタービン用HEPAフィルター・真空前処理・精密超音波洗浄技術
火力発電所のタービンの空気取り入れ口用のHEPAフィルターのい再生のための超音波洗浄技術である。約700mm角の枠が、SUS製の非常にしっかりした構造のHEPAフィルターの再生洗浄技術は、当社のMARSシリーズの専用機の一つである。HEPAの構造がしっかりしているとはいえ、超音波周波数は、50KHz~275KHzの広域同時多重波を使用、出力密度の2W/cm2の超音波振動子を 使う。真空前処理で フィルター内部の空気を完全に除去した後 溶解気体を十分に除去した水を導入して、超音波正洗、超音波逆洗を繰り返す。この技術により、火力発電所のタービン用のHEPAフィルターを 再生する。この技術は、日本から 中国等 アジア各地に 普及を図っている。
プラスチック・トレイの超音波洗浄
[金属・加工品 洗浄用 トレイ洗浄機]
多くの機械加工部品が、プラスチック・トレイで、大切に運ばれている。しかし、トレイは、長く使われ、金属加工品の搬送用トレイ等・・は、トレイ内部も外部も傷だらけになり、その傷の内部に 油や切り粉が 浸み込み、金属粉が 深く食い込んでいる事も 珍しくない。しかし、大切な製品を 入れて運ぶのであるから、トレイの中は、可能な限りきれいにしておきたい。
この目的で使用するのが、トレイ超音波洗浄装置である。トレイは、プラスチック製であるから、超音波を吸収しやすい。当社のキャビティ―ション強化システム付きのトレイ専用超音波洗浄装置の場合は、強力な超音波が、容易に プラスチックの容器を通過して 表裏とも 傷の中はもちろん、食い込んだ切り粉も除去する。当社のVEGAシリーズの中の トレイ専用機であるが、トレイ用のため 価格を低く抑えている。
[食品工業向け トレイ洗浄機~弁当箱洗浄装置まで]
食品用は、トレイ材質は、プラスチックよりも金属が 多く、また、鉱物油が 付く事は、考えない。逆に 細菌類も除去出来る水洗浄になる。これも 基本ベースは、当社のVEGAシリーズの中で 専用機として 対応するかコンベア方式になる。ここでも 強力無比な超音波キャビティーション強化システムの技術が 活躍する。
フォトマスク・光学レンズ、プリズム等の基本・超音波洗浄工程
日本が、超音波洗浄業界が 最も活気のあった時代は、9~16槽式のフォトマスクの洗浄機、レンズの多槽式等の洗浄機が 多数製造販売されていた時代では ないだろうか。フロンー113(CFC-113)が、使用禁止になってから、技術開発も 促進され、当社のキャビティーション強化システムの登場などにより、変化した部分もあるが 基本的な洗浄の考え方は 変化していない。
フォトマスク、各種光学レンズ、プリズム、ガラス基板を中心に 基本的な洗浄工程の考え方を 図にしてみた。図の見方ですが、たとえば 光学レンズのピッチ除去洗浄から、工程を組む場合の最も普通の洗浄工程は、ピッチ除去溶剤洗浄⇒溶剤・リンス超音波洗浄⇒蒸気洗浄⇒弱アルカリ系洗浄剤超音波洗浄⇒同・超音波洗浄⇒市水・リンス・シャワー洗浄⇒市水・超音波洗浄⇒純水・超音波洗浄⇒同・リンス⇒同・リンス⇒同・リンス⇒IPA・水置換・超音波洗浄⇒同・リンス⇒同・リンス⇒IPA・蒸気洗浄(他の溶剤・蒸気洗浄)である。 途中を短縮したり。さらに追加して、槽を増やしたり。9~16槽式の 超音波洗浄装置が 編成される。参考にして頂きたい。ガラス洗浄は、金属洗浄と異なる。潜傷対策など、金属にない課題もある。また、反射波が生じないので、キャビティ―ションの定在波のコントロールが、最重要になる。(詳細は、後日)
亜鉛ダイキャストのバリ除去 最適な超音波バリ取り技術
様々な金属のダイキャストのバリの内、超音波バリ取り技術で もっともよく取れると言う印象の 有るのが、亜鉛ダイキャストである。完全にふさがっている穴や、比較的大きな湯バリも 超音波でよく取れる。亜鉛ダイキャストのバリ取りは、超音波バリ取りが最も適していると 考えている。
ただ、あまりに 良く除去出来て 中国で失敗した例がある。
日系の大手企業の福建省の工場の日本人技術者が、突然、実験室に 亜鉛ダイキャスト製品をたくさん持ちこんできて 超音波バリ取り実験をやってほしいと言う。見るとバリが大きく、10mm程度の穴も 完全にふさがっている所も多い。これは、超音波バリ取りでは もちろん、ショットブラストでも除去出来まい、成型不良の典型だなと 下がって実験を見ていたら、ランダムに重ねていた亜鉛ダイキャスト製品のバリが、超音波で ぼろぼろと 落ちて行くのが見える!え~と思って、結果に お客さまと立ち会うと ふさがっていた穴もきれいに、開いて、バリは、何処も 全てきれいに取れている。
お客様は、大変喜んで、この実験機でいいから すぐ売れと言う。実験機納入後 追加で 4台 発注したいとも言うので、複数あった実験機のうちの一台を 緊急整備して納入し、次の注文書を待った!
1ヶ月後苦情が 来る。ストレーナー、フィルターが すぐ詰まって困ると言う。すぐ 技術を派遣したが、すでに遅し!お客様は何と 濾過圧力警報器の警報がうるさいので、設定を 0.4MPaを 0.7Mpaの変更。そのため フィルターが 潰れ、除去されたバリは、コア機器の真空脱気装置にまで 侵入、溶存酸素濃度が上昇、結果として 超音波バリ取り能力が 低下。真空脱気装置を交換補修しなくてはならなかった。お客様は、実験室でバリが きれいに取れた時に バリの量に気がつかなかったメーカー責任と主張され、妥協点を見つけるのに 大変時間がかかった。もちろん、日系企業の日本人技術者たちである。
その時以来、亜鉛ダイキャストのバリは、根元の強度が 弱いのか、繰り返し応力に弱いのか 実によく取れるが、あわてず、除去されるバリの量に 十分注意して 最終仕様を決めるようにしている。私の苦い失敗例である:文責 柴野