超音波バレル研磨の欠点
超音波バレルと既存のバレル研磨比較すると 超音波バレルには、大きな欠点がある。その大きな欠点を以下に記す。
1,伝統がない。これは、大きな問題である。
私の調査によれば、バリ取りメーカーは、欧米のバレル研磨機製造メーカーを中心に200社以上が確認できる。EUでは、HPを見る限りでは、伝統と技術の伝承が重視され、ドイツでは、親子3代を誇るバレルメーカーも散見される。バレルメーカーの数とその歴史を見れば、世界で、バレル研磨機は、数10万台、いや、数100万台が、現役で使用されているに違いない。そこから、集まる技術情報は、天文学的な数になるだろう。メディアの材質、形状、密度、コンパウンドの種類、量。対象製品の表面への圧力、相対速度、それらの無限ともいえる組み合わせ情報は、世界のバレルメーカーを進化させる。顧客情報を集約管理するバレルメーカーは、情報を数値管理し、お客様の依頼に その無限の組み合わせから、最適な解決手段をたちどころに示すはずだ。これが 伝統である。実績の宝庫である。
超音波バレル技術は、これがない。超音波バレル研磨を実用化しているのは、世界で、わが社のみ。多数の実績をお求めになるお客様の期待には、お答えできない。
2,1回の処理個数に 制約がある。
既存のバレル研磨は、原理上、1個からでも 実験し、データを取れる。超音波バレルは、メディアを使わない。超音波で発生するキャビティーと超音波振動による共擦れを利用する。従って、1回の実験に 原則100個以上使用する。1回の実験で 電子部品などであれば、数万個を使用して、超音波バレル実験を行う。お客様は、原則、実機と同じ希望処理数を準備する必要がある。
3,表面を梨地状にしたり、削ることは出来ない。
既存のバレル研磨は、対象製品の表面にメディアの選択により、様々な加工アクションが可能かもしれないが、超音波バレルは、バリ取りと 研磨のみである。照射時間によっては、角のr付けも、多少可能かもしれない。表面の酸化被膜除去も 可能ではあるが、バレル研磨に劣ると考えて居る。
4,他社の超音波で 実験したことのある超音波バレル効果なしの実績
超音波と言う言葉が同じであれば、その実験結果が 同じというわけではない。超音波洗浄技術の原理を知らず、単に 超音波を使ってみたというだけの 超音波実験の結果が、実に多くのお客様の技術室の記憶の倉庫に眠る。この壁を崩すのが難しい。直径1mm未満の空洞を集合させたガス星雲型のキャビティーを利用する超音波技術は、超音波の信頼を損ない、誤った技術を固定化させかねない。現代は、最大直径10㎜にも達する巨大真空エネルギーボールを無数に発生させて、洗浄やエッチングに使用する超音波技術の時代である。
過去の実績が、進化を否定している。
5,理論化、数値化の壁
新技術の導入は、多くの場合、担当者は、導入部署の責任者から その理論に基づく、数値データによる管理と補償を求められる。超音波で発生するキャビティーが、1個の真空の泡ではなく、さらに小さい真空の泡(マイクロキャビティと称する)の集合であり、それが 同期して、1秒間に2万回以上、発生と消滅を繰り返す。その時、発生する中心核から離れる方向と逆に向かう方向の衝撃波を 正と負の衝撃波と名付け、世界の技術者、研究者に 提起した。あれから40年。まだ、キャビティー内部の解析プログラムは、どこからも提案されていない。秒速1400m~1500mで 伝搬する超音波槽内の音波;粗密波の挙動と音圧の変化も 反射面が1m未満の密閉空間では、手の施しようもなく、スパコンでもなければ 答えが出ない。
ここで 非難して 利用を否定することが出来る。逆に 結果が出た時の現時点で手にできる計測指標で管理することもできる。そして、ゆっくり、しかし確実に 知識の輪を萎めて行く。宇宙生成のビックバン前の世界がどうであれ、我々は、今を生きる事が出来る。
新技術は、いつも逆流の中にいる。