誤解だらけの超音波エッチング
化学反応に超音波を使って 反応を促進しようという試みは、古くからおこなわれている。しかし、実験室レベルを除いて、超音波が 化学反応の促進に大きな効果を発揮したという事例は、ほとんど耳に入ってこない。
聞こえてくるのは、超音波を使っても効果がなかったという話ばかりで、典型的失敗事例として、負の経験が生産技術などに蓄積されているように見える。本当に超音波は 化学反応の促進に役立たないのか。あるいは、エッチングの高速化、精密化などに 使うのは無理なのか。
調べると、驚く事ばかりが出てくる。多くの事例で、基本的に超音波が理解されていない。基本的に超音波を反応槽に入れて、発振させると超音波の効果が表れると思っている。私は、以前、日刊工業新聞社から、誤解だらけの超音波洗浄と言うビデオを出して、警鐘を鳴らした。超音波洗浄を使うのであれば、最低限、キャビティ(微小真空核群)の発生密度、発生場所、その正と負の衝撃波、そして発生効率などをコントロールすべきだと説いた。その方法を解説した。それをキャビティーションコントロールと称した。
超音波エッチングを語るのであれば、或いは その成否を確認するのであれば、せめて超音波洗浄の基本~キャビティーションコントロールは、理解しておくべきだろう。この理解無くて 超音波エッチングの成否は語れない。
その上で、反応界面における発生気体と超音波のキャビティーのかかわりについて思い至るべきだ。1秒間に2万回以上の正と負の衝撃波を 反応界面で生じさせ、秒速100mで 反応生成物を 反応域から除去する物理的方法は、超音波以外に存在しない。
エッチングと言う世界でも 超音波を正しく理解していただき、利用していただける時代が来ることを 強く期待している。
by shibano
[追伸]中国の石油メーカーで 配管系内に 2400Wの長さ400mmmのそろばん玉状の超音波ホーンを20本取り付け、ある反応促進に利用している現場を見た。効率よりも数で結果を出そうという48000Wの超音波反応炉である。それを 何機も付けるという。使い方は未熟であっても その自由な投資意欲を うらやましく思ったものである。日本は 新しいことは 石橋をたたいても 渡らない、か。